すぐに給料相当額を確保したい場合には
従業員は解雇されてしまうと、生活の糧をその日から失ってしまうことがあります。
そんなときに急いで給料相当のお金を確保するための手段として、
地位保全・賃金仮払いの仮処分
という方法があります。
1 地位保全・賃金仮払いの仮処分とは
労働審判や通常の裁判で解雇の無効を主張する場合、どんなに早くても解決までに数ヶ月はかかってしまうことが通常です。
しかし、会社を解雇されて給与を失った従業員からすればそこまでの期間給与なしで生活することはできません。
そこで、仮に裁判所が従業員としての地位を認め、賃金の支払いを会社に命じるという方法が、賃金仮払いの仮処分という方法です。
通常の民事訴訟に比べ、早ければ申立から1週間から10日程度で賃金の支払い命令が出ることもあります。
2 認められるためには
賃金仮払いの仮処分が認められるためには、従業員が本当にいますぐ給与相当額を手に入れないと生活することができないといえることが必要です。
そしてそのことを裁判所に説明し、また家計の状態などを示す資料(家計簿や預金通帳)などを提出して、そのことを証明する必要があります(正確には「疎明する」といいます)。
解雇が有効か無効か分からない段階で、とりあえず下す判断となりますので、仮の地位を定める仮処分が認められたからと言って、解雇の無効を主張する裁判でも勝てるとは限りません。
あくまで、別の判断となります。
賃金仮払いの仮処分をするかどうかは、従業員の生活状況から判断しますので、必ずしも行うかどうかはわかりませんが、認められれば従業員は生活を確保しながら裁判で争うことができることになり有利な立場になります。